書いたら分かると思ってた。

そんな頃もありました。

【ネタバレ】噂の末満舞台、『TRUMP』と『LILIUM』を見た話

※以下、2016年1月23日にprivatterに掲載した文章(http://privatter.net/p/1288935)を、アヤシイ日本語やハズカシイ誤変換などを修正して転記したものです。

 

 ドルヲタ組や若手俳優沼の方々から勧められて、末満健一作・演出の『TRUMP -THE ORIGIN OF THE VAMPIRE-』と『LILIUM -少女純潔歌劇-』をDVDで見ました。折角勧めてもらって普段自分からは見ないようなものを見たので、ボチボチ感想を書こうかと思います。私が見た順番は

(1)LILIUM http://www.amazon.co.jp/dp/B00M7FG3Y8/ref=cm_sw_r_tw_dp_Id0Owb0APGECD

(2)TRUMP truth http://www.amazon.co.jp/dp/B00B20FKNE/ref=cm_sw_r_tw_dp_fe0Owb0RPEGXC

(3)TRUMP reverse http://www.amazon.co.jp/dp/B00B20FKPM/ref=cm_sw_r_tw_dp_Vg0Owb01N1YFD

 上記の通り。TRUMPから見るのが筋だそうなのですが、周囲から「LILIUMから見た人の意見が知りたい」と言われたので敢えてこの順番で鑑賞しました。
 ちなみに私は「映画や演劇や音楽ライブなどは好きだが、若手俳優界隈および女性アイドル界隈は触ったことがない」奴でして、おそらく、両作品のメインターゲット客層とは異なるタイプの人間ではないかと思っています。

以下ネタバレを含みます。

 

 

 というわけで、『LILIUM』から見たんですけれども。
 クライマックスまできて、周囲の人達から「本当はTRUMPから見ないと訳がわからない」と言われていた理由を理解しました。「おいおいいきなり誰だよソフィ・アンダーソンって。いやウルってなんだよウルって」と画面の前で思わず真顔でツッコミを入れてしまった……。
 LILIUMのファルス=ソフィがとった行動は、TRUMPでクラウスがとった行動と同じなんですよね。「永遠をともに生きる存在を求め、他者を同意なく不老不死にしてしまう」という点で。TRUMP当時はファルス=ソフィはその行為を拒否・否定していました。それが、LILIUMではクラウスと同じ仕打ちをスノウやリリーに対して行ってしまう。そして、TRUMPにおけるファルス=ソフィと同じ立場に置かれたリリーも、もしかするとこの先彼と同じ行為をするかもしれない……そういう負の連鎖の薄ら寒さみたいなものが、LILIUMだけしか観ていないと、うまく伝わらないのではないでしょうか。
 しかしまあ、その負の連鎖はLILIUMのみでも感じ取ることができなくもないもので、知っていたらより楽しめますよね程度で済むとは思います。でもファルス=ソフィはあまりにも唐突過ぎた。あのソフィの登場(というか正体明かし)は話として違和感がありました。突然すぎる。「僕の本当の名前はソフィ・アンダーソン」って深刻な顔で名乗られても、TRUMP見てない客としては「は?」って感じなわけですよ。お前誰だと。で、ああこれがTRUMP見てないと汲み取れない部分か……ってなるわけです。
 それって、1本の演劇作品としてどうなんだろう……と正直少し思うんですよね。TRUMPとLILIUMが同じような層を対象にした連作であれば「そういうやり方もあるわな」なのですが、この2作品はターゲットが違う。LILIUMを見にくるハロプロファンがTRUMPを観ているとは考えづらいわけで……。
 もちろんこうやって謎や仕掛けを入れることで双方の作品の動員を増やすことができる、というのは分かります。それでもやはり私は、個人的な思いとして、LILIUMもそれ自体として完結してほしかったなあと思ってしまいます。

 ところで、クライマックスで見せたリリーの潔癖ゆえの残酷さは、作品タイトルに偽りなしという感じで良かったですね。ファルス=ソフィの行動が自分の価値にそぐわないから抵抗しようというところまでは普通だと思うのですが、そこで他の少女たちを巻き込んで皆殺しエンドを選択する、その視野の狭さや思い込んだら極端へと突っ走る感じがまさに年頃の少女という感じで。他の少女たちの自由意志なぞ知らんと言わんばかりのリリーの反乱でしたが、彼女、そんな自分の行動がファルス=ソフィの行動と同質であると気付いていたのかどうなのか。分かっていないだろうなあ。リリーを演じた鞘師の潔癖で真面目そうな雰囲気が、ラストシーンの狂い具合をほどよく増幅していたとも思います。

 リリー以外、シルベチカとマリーゴールドも純粋かつ潔癖であるがゆえに極端へ走るキャラクターで、あの作品は総じてそういう少女たちの潔癖ゆえの暴走によって動かされていたのだなと思います。

 ……いやしかし、考えれば考えるほどスノウと龍胆&紫蘭は損な人生だなアレは……化けて出ても許される……。

 

 で、それから『TRUMP』をtruth→reverseの順で鑑賞。LILIUMとTRUMPはやはり話の基本構造は同じなんだなあと思いながら観ていました。ラファエロマリーゴールドとか、アンジェリコ⇔マーガレットとか、アレン⇔シルベチカとか、そして、クラウス⇔ファルス(=ソフィ)とか。
 その辺を意識しつつLILIUM思い出しつつ見ると「あ~悲劇は繰り返されるんですな~」という気分に。 LILIUMでもですが、TRUMPのクランは「創造主の箱庭」であり、創造主(クラウス、ファルス=ソフィ)はそこで箱庭療法しているようなもんで。本当に、繰り返してるんですよね。そして同じような条件を揃えれば、大体似たような事態が発生するもんなのだなと。ひとの行動パターンはそう多くはないよという話。
 truthの方が配役が馴染んでいる感じがありました。ウル役の三津谷亮なんかは、あのおっとりした雰囲気としなやかな所作が正に高貴な血筋の御曹司といった風情で、あれは配役の勝利ですね。

 

 『LILIUM』も『TRUMP』も、吸血鬼モノとして極めてオーソドックスな筋だと思います。永遠を生きるものの孤独、限りある生ゆえの輝き、死への恐怖、自己決定権を奪われる絶望、他者への執着。そんなオーソドックスな話だからこそ役者の技量が目立つなあと感じたのでした。

 

 話の筋が極めてオーソドックスでストーリーの理解に頭のCPUを割かずに済んだ分、私は「この2作品をどういう風に受容したらいいんだろうか」と悩みながら見ることになりました。普通の演劇作品として向き合うべきなのか、彼女/彼らをひとりの役者として見たらいいのか、そういったことです。特にLILIUM。
 演じているのが駆け出しの若い俳優であったり、演劇が本業ではない女性アイドルであったり。日頃私が見慣れている映画や舞台とは少し趣きが違っていて、どういう評価軸を持ちだしたらいいのか分からないんです。フォロワーさんからは「たぶんアイドルのコンサートに近い何かですよ」と言われたりもしたのですが、演劇という形式を取られてしまう限り、私はどうしてもそこに引っかかる……いや、TRUMPはいつもと同じ感覚でいってもいいのかな……本当にわからない。
 そんな中で、『TRUMP truth』でクラウスを演じた陳内将、アレンの山田裕貴、『LILIUM』でマリーゴールドを演じた田村芽実は、私が見慣れた演劇らしい演劇をしていて、観ていてホッとしました。特に田村マリーゴールドは圧巻。序盤のおどおどした様子から徐々に狂気を深める様子が本当にすごい。歌唱力も高く、もはや1人帝劇でした。いやあ、すごいものを見せてもらった。

 

 戸惑いも大きかったですが、日頃見たことがないものを見られて興味深い3作品でした。オススメしてくださった方々、ありがとうございます。今はSPECTERという3つ目のストーリーも始まったそうなので、そちらも機会があれば見てみたいものです。

 

 

 ところで、あの、実は私がTRUMPとLILIUM観たのって、某刀集めブラゲーのストレートプレイが末満作品になるって聞いたからってのもかなり大きかったんですが。これ、刀のほうも、燃えますね?37564エンドですね?筋を通しつつどんどん燃やして折ってほしいものです。学級会を……恐れずに……。私の推し刀、あの真っ白なアレなんですけれども、奴はどんな折れ方してくれるかな~~(既に折れる前提)